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「山中温泉には四人の恩人がおります」とお話しくださったのは温泉を見守る医王寺のご住職。一人目は1300年前に温泉を見つけたといわれる僧・行基。二人目は温泉を復興させた鎌倉時代の武将・長谷部信連(はせべ のぶつら)。そして500年ほど前に数々の伝説を残した蓮如上人、最後は俳聖・松尾芭蕉。「芭蕉さんはここ山中温泉に8泊9日お泊まりになられたんですよ」
そのときに詠んだのがこの一句。「山中や 菊は手折らじ 湯の匂(にほ)ひ」。総湯「菊の湯」の名前もこの句に由来している。総湯前にある飲泉所でお湯を飲むと、ぷんと湯が香ってくる。芭蕉と同じ湯の香を感じているかと思うとありがたい気分だ。
山中温泉は清流・大聖寺川に沿って開けた湯の町だ。こおろぎ橋からあやとりはし、黒谷橋までの1.3キロには遊歩道が設けられ、途中には川床もしつらえられている。ここで道場六三郎レシピの甘味をいただく。ほおをなでる川風が気持ちいい。一方、街なかのメイン道路は、「ゆげ街道」として整備。電柱を地中化した道は、すっきりとして歩きやすい。建物の高さや色合い、看板の大きさにキマリを設けているのだそうで、街並みに統一感がある。各地の温泉地でよく見かける廃虚のような建物もなければ、ゴミの山もない。通りには寄せ植えの花が飾られ、街並みは美しい。さすが風流人の心をとらえた温泉地。美意識の高さがそこかしこに感じられた。
温泉ライター歴19年。国内外で浸かったお湯は千湯以上。肌でpHを感じ、飲んで湯の成分を確かめるのを信条に、温泉行脚の日々を過ごす。温泉入浴剤にもこだわりあり。
旅行誌などで温泉記事を執筆中。日本温泉地域学会員
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