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10月30日は初恋の日。「小諸なる古城のほとり」に立つ旅館中棚荘が申請をし、毎年この日に「初恋はがき大賞」を発表している。島崎藤村が「まだあげそめし」、初恋の詩を発表したのが10月30日。明治30年代の6年間を長野県の小諸で過ごした藤村は、当時、中棚鉱泉と言われていた中棚荘にもしばしば通っていた…、といったいきさつもあり初恋の日が設定された。藤村が過ごした「藤村の間」は、今でも一般客室として使われている。角部屋で広々としているが決して華美な部屋ではない。こうした宿の雰囲気に合わせて建てられたのか、今回宿泊した平成館の客室も、時間になじんだいいムードであった。
10月に入ると中棚荘では、りんご風呂がはじまる。坂をあがった先にある湯殿は、木組み天井が見事な堂々たる造り。内湯と畳の脱衣場とは仕切りがなく、開放的で使いやすい。内湯浴槽にぷかぷかと浮かぶりんごの赤が、シックな館内では鮮やかでつやっぽく感じられる。近づくとぷんと香りが立ち上がってくる。りんごは「ほぼ毎日入れ替える」のだそうで、使用済みりんごは、ペットであるヤギやブタのごはんにもなっている。「ですので、この時期、気をつけないとヤギやブタくんたちは太ってしまうんですよ」とスタッフの方。ヤギ小屋の隣では、哲学的な顔だちをした、ちびという名の犬も暮らしている。
明治の文豪ゆかりの宿と聞くと、少々、堅苦しい印象を受けるけれど、中棚荘は、もっと気楽に泊まれる宿だ。旅籠(はたご)の残り香が感じられる。ワクワク気持ちをアップさせてお泊まりというよりは、ゆっくりと気持ちが落ち着いてくる。1名宿泊の場合のアップ料金は1050円。平日は一人旅も歓迎してくれる。
温泉ライター歴20年。国内外で浸かったお湯は千湯以上。肌でpHを感じ、飲んで湯の成分を確かめるのを信条に、温泉行脚の日々を過ごす。温泉入浴剤にもこだわりあり。
旅行誌などで温泉記事を執筆中。日本温泉地域学会員
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