
1788年に始まったヨーロッパ人によるオーストラリアの植民地化は、破滅的な環境変化への幕開けとなり、実際、現代のオーストラリア人は世界でも例を見ないほど厳しい環境問題に取り組まざるを得なくなっている。アラスカを除くアメリカ本土と同じ面積の国土に住むわずか2000万人が環境にそれほどのダメージを与えていることは奇妙に思えるかもしれないが、オーストラリアは長年ほかの大陸から孤立していたことや、脆弱な土壌と厳しい気候によって、特に人間の持ち込んだ変化の影響を受けやすくなっているのである。
オーストラリアの環境へのダメージはさまざまな面に現われており、最も深刻な問題は有害生物種の移入、森林破壊、放牧地での過剰飼育、農業の不適切な土地利用、水系撹乱によるものである。1788年直後に、野生化した飼い猫がオーストラリア奥地の自然環境に入り込んでからは、キツネから野生ラクダ、オオヒキガエルまで多数の害獣がオーストラリアで野生化し、オーストラリア原産の動物を絶滅に追いやっている。ヨーロッパ人の入植以前にオーストラリアに生息していた哺乳類の1割は現在すでに絶滅しており、さらに多くの種が絶滅の危機にさらされている。これらの動物の絶滅は、オーストラリア原産の植物、鳥類、両生類にも影響を及ぼしている。
森林破壊による影響も深刻である。残された「原生林」の木立を守るため、自然保護運動家らが木材業者と戦っているが、オーストラリアの熱帯雨林のほとんどで伐採が進んでいる。オーストラリアの放牧地では過去1世紀以上にわたって過剰に家畜が飼育され続けてきたが、その結果、周期的に発生する干ばつと洪水の際に、土壌と地域経済がともに非常に大きな影響を受け、さらにオーストラリア原産種の動植物の多くが絶滅してしまった。農業の発展は、土地開墾と灌漑システムの導入をもたらしたが、この影響も深刻である。わずか100年前にウェスタン・オーストラリア州では小麦大農場の開墾を目的として、多様性に富む素晴らしい植物群落が一掃されたが、現在、その地方の3分の1の土壌が塩化し、使えなくなっている。この地方では1m2当たり70〜120kgの塩が地下にあるとされ、植生を除去した結果、水分が地下深くまで浸透して塩の結晶が溶け、塩水が地表近くまで上昇してきたのである。
経済面では、オーストラリア全土のわずか1.5%の面積で農業収穫高の95%が生産されており、このうちの大半がマレー−ダーリング川流域Murray-Darling Basinに集中している。この地域はオーストラリア農業の中心地だが、現在、土壌の塩害と川の塩水化の深刻な脅威にさらされているのもこの地域なのである。灌漑用水が古代の海に堆積した地層に浸透し、そこから貯水池や農場に塩分を運んでいるのである。何らかの対策を打たなければ、マレー川下流は塩分が上昇して、10〜20年後には飲料水として適さないものとなり、100万人以上の人口を擁するアデレードの水資源の供給に支障が出ると見られている。
国全体を巻き込む大規模な生物的危機が迫っているにもかかわらず、政府や自治体の反応は遅かった。1980年代に入ってからようやく動きが見られたが、重要な対策がとられたのは90年代になってからであった。重要な全国規模のイニシアティブとしては、ランドケアLandcare(国民が効果的に地域の環境問題に対処できるようにすることを目的としたNPO組織(www.landcareaustralia.com.au)の設立とナショナル・ヘリテージ・トラスト基金National Heritage Trust Fundによる25億ドルの資金提供が挙げられる。それでも、オーストラリアが直面する環境問題のいくつかは非常に対策が難しく、環境破壊の進行を食い止める効果がほとんど上がっていないのが現状である。個人レベルでも結束して協力している。団体では、オーストラリアン・ブッシュ・ヘリテージ基金Australian Bush Heritage Fund(www.bushheritage.asn.au)やオーストラリア野生動物保護協会Australian Wildlife Conservancy(AWC・www.australianwildlife.org)は、個人から寄付とボランティアを募り、オーストラリア原産の動植物の保護を行っている。すでに目覚しい成功を収めている団体もあり、たとえばAWCでは、すでに130万エーカー(52万ha)の借地で多くの絶滅危惧種を保護・管理している。
オーストラリアが抱える問題は非常に深刻で、これを克服するには革命的な措置が必要となるだろう。農地から郊外や市の中心部に至るまで、あらゆる生活の舞台において持続可能な取組みが必要となるからである。再生エネルギー、持続可能な農業と水の使用は、これらの取組みの中心をなすものであり、現在、オーストラリア国民はようやく持続可能性に向けたロードマップを作り始めている。オーストラリアという大陸が将来も長期的に存続するためには、この作業は欠かせないものなのである。
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