
かつてはタスマニア州に広く生息した、縦縞模様のある肉食獣タスマニアン・タイガーTasmanian tiger(Thylacinus cynocephalus、フクロオオカミ)の物語には、今のところ、2つの異なるエンディングがある。
まず1つめだが、19〜20世紀の初めにかけて、ヨーロッパ人入植者による狩りのため、タスマニアン・タイガーは絶滅直前まで追い込まれた。そして、惨めな捕らわれの身となった最後のタイガーが、1936年、ホバートのビューマリス動物園で死亡。タイガーの絶滅説を唱える人たちは、このできごと以来、「目撃」の申し立てはごまんとあるが、生きたタイガーは1頭も発見されていないと指摘している。
2つめは、タスマニア原生林の奥深くで、実はひそかにタイガーが生存しているというもの。この説を主張する人たちは、裏づけのない目撃報告が増えれば増えるほど、タイガーが現在も生息している可能性が高くなるとなぜか信じていて、自分たちが夢を見ていたいがためにタイガーの絶滅を認めないのではないかと言われていることに反論している。
子供をお腹の袋に入れて運び、大きくて力強いあごを持つというタスマニアン・タイガーの肉体の神秘は、たまたまその存在の謎が議論を呼んでいたこともあり、この大きな夜行性のハンターを格好の商売ネタにした。タスマニアの企業はビールのラベルからテレビのCMまで、あらゆるものにタイガーの写真を登場させた。
その間に、シドニーのオーストラリア博物館の学者たちが、タイガー伝説にまた別のエンディングを与えようと台本を書き始めた。3つめのストーリーの幕開けとして、生物学者たちは、1866年以来アルコール漬けで保存してきたタイガーの子供から良質のDNAをはがしとり、その複製に成功したと発表した。この数百万ドル規模の計画にかかわった科学者たちの中には、数々の難題が待ち受けてはいるものの、10年以内にクローン・タスマニアン・タイガー第1号が生まれる可能性があると述べる者もいる。このプロジェクトは、現在絶滅しかけている動物を救うことに金を使ってほしいと考える人たちからの批判を招いたが、科学者たちはタイガー伝説に新しい展開をもたらそうと躍起になっているようだ。タスマニアン・タイガーとクローン・プロジェクトについての情報は、www.austmus.gov.au/thylacineに詳しい。
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