
伝統的にハワイの教育制度では子供たちに標準英語の使用を強制し、教室でピジン語を使わないよう指導してきた。州の教育省の役人(それに親たちも)が問題にしてきたのはピジン語で話し、考え、書く子供たちの、全国共通試験の成績が低いことだ。そんな中でもピジン語を正式の言語として認めようという運動が起きている。たとえば、ハワイ大学の学部生と大学院生のグループ、ダ・ピジン・クーDa Pidgin Coup。ピジン語は標準英語と共存できるし、またピジン語を使うことで学習過程が容易になるのならピジン語を禁止すべきではないと主張している。グループの議論にもあるとおり、肝心なのは「何を」言うかその内容であって、「いかに」言うかという手段ではないのだ。
またピジン語推進者として最も有名なのが、オアフ島のカピオラニ・コミュニティー・カレッジ英語科講師のリー・トノウチ。すべてピジン語で書いた書類を大学に提出して採用されたという人だ。彼は多作の作家、劇作家でもあり、ピジン語を認知させるために巧妙で威力のある議論を仕掛けている。「Da Word」、「Living Pidgin: Contemplations on Pidgin Culture」などの著作もある。
ピジン語のこの論争は、1996年カリフォルニア州オークランドで起きたエボニクス(黒人英語)をめぐる論争に似ている。エボニクスとは「ebony(黒檀)」と「phonics(発音中心の語学教授法)」に由来する語で、オークランドの教育委員会はエボニクスを第二言語として認めることを決議した。教育委員会の結論は、多数のアフリカ系アメリカ人の子弟は自在に話せる自分たちの方言を携えて学校に来ている、彼らからその言葉を取り上げることは教育的に逆効果だ、というものだった。
とはいえ、ピジン語は地元の人々に広く一般に用いられているわけでない。ピジン語の使用には社会的経済的な階級差があって、オアフ島のプナホウ校やイオラニ校のようなトップクラスの学校ではほとんどピジン語を耳にすることはない。しかし地元の人は全員ピジン語を理解する。そしてピジン語を、互いの共通のアイデンティティとユーモアのセンスにつなぎ合わせる、学校生活における接着剤のようなものだと考えている。多くの人が2つの言語を解し、状況に応じてピジン語か標準英語か、適当な言葉を選び、使い分けている。
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