
守護聖人たちがお出迎え
信仰心などなくても、サン・ピエトロ大聖堂には圧倒されてしまう。この大聖堂は、巨大なだけでなく、天才芸術家たちの不朽の名作でもある。事務的な注意を一つしておくと、中に入りたいならきちんとした格好で。つまり、短パン、ミニスカート、ノースリーブはダメ。入口に陣取る服装の守護聖人に言い訳は通じない。 写真を拡大する⇒
4世紀にここに最初の聖堂を建設したのは、初のキリスト教徒のローマ皇帝、コンスタンティヌス帝だ。西暦6〜67年に聖ペテロが殉教、埋葬されたとされる場所、また、皇帝ネロのヴァチカン競技場Ager Vaticanusがあったともいわれる場所で、326年に建設が始まった。
1000年あまり後、聖堂はすっかり老朽化していた。15世紀中頃、教皇ニコラウス5世が応急の修復を施したが、1506年に本格的な改築を始めたのはユリウス2世だ。主任建築家に任命されたブラマンテは、新聖堂を、中央ドームと4つの小ドームからなる正方形のギリシャ十字プランで設計した。彼は旧聖堂の解体も監督したが、貴重な芸術作品を必要以上に破壊したとして大きな批判を浴びた。
建設に150年以上を要した新聖堂は、現在世界で2番目に大きい聖堂(最大のものはコートジボワールのヤムスクロにある)。ブラマンテ、ラファエロ、アントニオ・ダ・サンガッロ、ジャコモ・デッラ・ポルタ、カルロ・マデルノと、そうそうたるメンバーが建設に携わったが、総じてサン・ピエトロの再建は、1547年に72歳でこの事業を引き継ぎ、ドームの設計を担当したミケランジェロに負うところが大きい。
ファザードと柱廊は、ミケランジェロの死後、仕事を引き継いだマデルノが設計した。マデルノはまた、ブラマンテのギリシャ十字プランを機能的な長方形のラテン十字プランに変更し、身廊を広場の方向に延長するよう命ぜられる。
ベルニーニとジャコモ・デッラ・ポルタが装飾を手がけた、6万人を収容できる洞窟のような内部(全長187m)は、目を見張る美術品に彩られている。中でも白眉は右側廊の手前にあるミケランジェロのピエタPietà。弱冠25歳のときに制作し、彼が署名(聖母が胸にかけた飾り帯の上)を入れた唯一の作品だ。1972年にハンマーで一部を破壊されるという事件があったため、現在は防弾ガラスで保護されている。
ピエタの近く、入口のすぐ内側にある赤斑岩の円盤は、教皇がシャルルマーニュをはじめとする神聖ローマ皇帝たちに戴冠した場所を標している。
教会中央にそびえる高さ29mのバロック様式の天蓋baldachinは、ベルニーニの作。パンテオンから持ち出したブロンズで造られた天蓋で、4本のねじれ円柱に支えられ、主祭壇の上に立っている。主祭壇の下は聖ペテロの墓があった場所だ。この主祭壇でミサを行うことができるのは教皇だけ。
主祭壇に向かって右側にあるのは、アルノルフォ・ディ・カンビオの13世紀の作品とされる、有名な聖ペテロのブロンズ像。像の右足は、多くの巡礼者が口づけたりなでたりするため、すり減っている。
主祭壇の上にそびえる119mのドームは、ミケランジェロの傑作だ。ドームの支柱には、レリクイエ・マッジョーリReliquie Maggiori(主要聖遺物)の浮き彫りが施されている。イエスの脇腹を刺した聖ロンギヌスの槍、奇跡によってキリストの顔が浮かび上がった聖ヴェロニカの衣服、コンスタンティヌス帝の母、聖ヘレナが持ち帰った(キリストが磔〈はりつけ〉になった)聖十字架の破片などだ。
ドーム入口は大聖堂の右端で、行列ができているのですぐわかるはず。中程まで小さなエレベエーターで上れるが、塔頂はまだまだ先だ。めげずに上り続ければ、ごほうびにローマを見渡す極上の眺めが待っている。苦労の甲斐は十分あるが、時間もかかるしかなり疲れるので、閉所恐怖症やめまいをおこしやすい人はやめておこう。
聖堂下の地下霊廟Sacre Grotte Vaticaneには、ヨハネ・パウロ2世をはじめ、多くの教皇の墓がある。入口は主祭壇に向かって右側だ。
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