
ミティラの文化は本質的にガンジス平原の文化と同じで、ヒンドゥー教のカースト制度が厳格に維持されている。大半が自給農家だが、土地を所有している家は概して非常に少なく、多くが餓死寸前である。そして、金貸しやジャミンダールzamindar(大地主)に支配されている。
ジャミンダールは通常ブラーマンBrahmin(司祭)またはクシャトリヤKshatriya(軍人)のカーストに属する者がなり、封建時代のような大地主の任務に従事するとともに、因襲的に金貸しの任務にも従事する。小作人や金を借りている者は事実上、土地に縛られて働かされる農奴である。
ミティラ地方の人はほとんどが、通例わずか100世帯前後の小さな村で暮らしている。家の壁は竹または草葺きで造り、牛糞と泥を混ぜた漆喰を塗っている。屋根は草葺きだが、中には瓦を葺いた家もある。ほとんどの家に、やはり泥と牛糞を塗った塀で囲われた庭がある。
ミティラ地方の女性は、嫁ぎ先で働き手になるものとして育てられ、子供のうちに結婚する者も多い。思春期以降は、家族以外の男性に顔を見られないようにベールをかぶる。
文化的・宗教的な伝統の一環として、女性は各自の家の外壁に人目を引くような絵を描く。室内でも、陶器を収納する箱や部屋の柱に模様を描いている。それぞれのカーストや宗教によって独自の様式とシンボルが生み出され、母から娘へと受け継がれている。伝統的に、絵や装飾はたんに美的な結果を創り出すためだけに施されるのでもなければ、たんにカタルシスまたは自己表現のためだけに施されるのでもない。絵は主として文化的・宗教的な動機から湧き出てくるのだ。絵を描くという行為は、儀式の一環であり、後の結果そのものより重要であるといえる。そして、完成した絵は、魔よけ、祈り、瞑想の補助などの役割を果たす。
絵の題材はしばしばヒンドゥー教の神話から得る。複合されたシンボル(明らかにマンダラのような特徴を持ったものもある)や、単純で抽象的に見える形(ハンドステンシル、クジャク、子を宿している象、魚など)を用いてもよいし、物語性(宗教的な物語を表現する)を採り入れてもよい。クシャトリヤを含む高位のカーストは、きわめて緻密で抽象的な形を生み出した。低位のカーストの絵はもっと単純で現実的なものが多いが、エネルギッシュで表現主義的な(主観的な感情表現を追求する)様式を受け継ぎ、形式的な図案に対する強烈なセンスを持っている。
インドのビハール州マドゥバニMadubaniのミティラ画は、アートの分野で世界的に認められている。最もよく知られているのが、お見合い結婚の支度金の一部として花婿に贈られる、クシャトリヤの精緻なウエディング・ペインティングである。
ごく最近まで、国境のネパール側で製作されたアートにはほとんど関心が払われなかった。このような状況が変わったのは、1989年にジャナクプル女性芸術プロジェクトが発足してからだ。このプロジェクトの目的は、伝統的なミティラ画の技術の向上と女性画家の奨励の2つである。拠点は、ジャナクプル女性開発センターJanakpur Women's Development Centreに置かれている。このセンターを訪れて女性たちが作業しているのを見学したり、作品を購入したりできる。
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