
9.11の犠牲者へ祈りを捧げる
世界貿易センター跡地
9月11日に舞い上がった粉塵は消え去ったかもしれないが、グラウンド・ゼロの再建計画をめぐる論争と内紛は、今も治まっていない。この場にふさわしい、感動的で力強く、美しくて有益な再開発とは何か、何年も議論が続いているが、その過程は劇的な事件や政治工作に満ちている。そして、悲しみと怒りを背負った生存者たちと、あの悲劇に世界的な意義を持たせようとする芸術家や建築家の間に、対立が生まれることも多い。写真を拡大する⇒
まずは要約しておこう。9月11日直後、灰が積もり、死臭が充満したグラウンド・ゼロ周辺一帯は、救助隊員、警官、マスコミ、そして焼け残った所有物を集める住民ばかりがあふれていた。そして9月11日の臨時メモリアルがあちこちに現れる。たとえば公式なものでは、グラウンド・ゼロ見学台。その後この見学台は、WTCビルの誕生から終末までの歴史を紹介する展示パネルをはめ込んだ、ビューイング・ウォールViewing Wallに姿を変えた。さらには、どこからともなく現れた、額入りの写真やTシャツなど感傷的な記念品を売る、大勢の物売りといった非公式なものもある。事件後少なくとも1年間は、本当の意味での地区の活力は消えていたが、連邦議会が創案した免税の自由公債プログラムが、大勢の住民や事業主を呼び戻し始めた。地区は急速な発展ムードに包まれ、現在そのピークを迎えている。それでもこの活気にずっと影を落としているのが、かつて双子のビルが立っていた跡地。この場所を、一体どうすればよいのだろうか?
最初はすべて順調に進むかのように思われた。計画を監督するロウアー・マンハッタン開発公社が設立され、優れた建築家、ダニエル・リベスキンドがこの計画の適任者として選ばれた。リベスキンドは設計コンペの優勝者だが、このコンペがそもそも何を理想として選考されたのか、はっきりしないという声が多い。「主任計画立案者」となったリベスキンドは計画を立案し、承認される。この計画には、ジョージ・パタキ州知事がすぐさま「フリーダム・タワーFreedom Tower」と名付けた、1776フィート(約533m)の高層ビルも含まれていた。だがその後、開発業者のラリー・シルバースタインは、どのようなビルが建つにせよ、採算を取るためにテナントとして企業を誘致する必要があると主張する。他方、ニューヨーク市警察は、テロリストを閉め出せるよう、根本的な設計の見直しを要求。現在は、数名の他の建築家が審議会に参加し、リベスキンドとの「強制的な結合」を押しつけられている。リベスキンドの最初の設計は大幅に何度も変更された。その一方で開発業者たちは、公式の「世界貿易センター商業設計ガイドラインWorld Trade Center Commercial Design Guidelines」の最終案に、いまだ合意していない。これは最近露見した不安要素。折しも、跡地で2番目に大きいオフィスタワー(65階建て)の設計者として、新しく有名建築家、ノーマン・フォスターに白羽の矢が立ったところだった。
そして多くのニューヨーカーが最も不快に思ったのが、芸術と文化をめぐる論争、どのようなタイプの文化施設をどの程度取り入れるのが、記念施設計画にふさわしいのかという論争だ。この議論が山場を迎えたのは2005年9月、パタキ知事がインターナショナル・フリーダム・センターInternational Freedom Centerの計画を廃棄し、グローバルな視点から見た人権をテーマとした、大規模な芸術・文化センターを設立すると発表したときだ。9月11日の犠牲者遺族が、世界貿易センターの悲劇に文化をからめるべきではないと激怒したため、パタキ知事は非国民扱いされることを恐れて、計画から博物館関係のプランをそっくり排除した。同じような反論があがったため、ドローイング・センターDrawing Centerの移転計画も取りやめとなり、パフォーミング・アート・センターの計画に関する議論も行き詰まっている。フリーダム・センターがボツになった分を「埋め合わせる」ため、パタキ知事と開発業者は店舗とオフィスからなる施設の計画を提案している。シルバースタインにとっては願ってもない案だが、最初の計画に携わっていた芸術家たちや、情熱を持って取り組んでいた人々にとっては屈辱的な話だ。
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